-んです(のだ)

【-んです/のだ】

日本語の動詞には「見る」と「見ます」というふたつのカタチがあり、これらはそれぞれ普通体・丁寧体とよばれることが多い。この、一般に「普通体」と呼ばれる「見る」をはじめとする一連の「見る・見た・見ない・見なかった」というカタチを総称して、日本語教育では普通形と呼ぶ。これは「普通体」とはまったく異なる概念である。

見たり 聞いたり 言ったりして、たぶんもう おたがいにすんだこと・わかったこと・伝わったこと【成立・認知・共有】や、おきたこと・あったこと【経験】には、この「普通体」をつかう。「普通体」は「です」に直につくことができないため「の」を介してつく。これがいわゆる「-んです(-のだ)」である。

例)
A:きのう映画を見ました
(「映画を見ました」という発言により映画を見たことを知り共有された)

見ました(fresh/生)>>> 見た(freeze/固)

B:あ、映画、 見たんですか。(相手の発話を受けたあいづち/catch)
A:はい、 見ました(fresh)。 見たんですが、…。(self:pass and next)
B:なに、 見たんですか。(共有された事実を前提にその周辺情報へと話題を移す/catch&return)

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この本にも書いてある

『「の(だ)」の機能』 野田春美 (くろしお出版 1997) 15ページから引用

1.3.「の(だ)」の本質・基本的機能に関する研究
三上章(1953a)、林大(1964)、佐治圭三(1986b)などは、ごく大まかに言えば、「の(だ)」の本質を、「の」に前接する部分をすでに成立しているものとし、それに「だ」を添えて提出することだと見ている点で共通している

以上引用

※太字・赤字・下線はこちらで施したものです


疑問詞疑問文(新宿へ行きたい)んですが…という二つの例文について
規則であるかのように無条件に「〜んです」を使用するものとしてあげられることもあるこれらふたつの例文であるが、「〜んです」がつかわれるのには理由がある。


疑問詞疑問文の場合
「なにを」見るのか尋ねるのは「映画を見る」という事実が共有されてからのことである。既に共有(両者に認知)された映画を見るという事実を「見るんですか」とフリーズしておいて、さあそれでは「なにを(見るのか)」というそのつぎの(副次・周辺)情報をたずねる。ある事実を踏まえてそのつぎの(副次・周辺)情報をたずねるのが、疑問詞疑問文であるのだから、その前提となる事実を示すのに「〜んです」が使われるのは当たり前のことである。


(新宿へ行きたい)んですが
いや実は新宿へ行きたい。で、ついては新宿への交通はどのような手段が考えられるか教えていただきたい。新宿へ行きたいという事実を「んです」でフリーズすると「これは前提であり、その先に言いたいことがあるんですよ」というサインになる。